メニュー

「いびき」の裏にさまざまな病気の影 睡眠時無呼吸症候群の真の恐ろしさに迫る

[2020.06.20]

耳鼻咽喉科領域を中心に、複雑かつ難度の高いさまざまな疾患にも豊富な治療実績を誇るDr.Yellow ClinicのDr.Yellow直樹先生。今回対談させていただくテーマは「睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)」についてです。この病気は文字どおり、眠っている間に呼吸が止まるという大変怖い病気です。しかしながらご自身だけでは異変に気づきにくく、日本では300万人以上もの潜在患者がいるとも推計されています。今回も実際の診療現場でのエピソードをもとに詳しいお話をお伺いいたします。

「いびき」は忍び寄る死への危険信号かも―
突然死だけではない、認知症・脳卒中・脳梗塞などのリスクを高める可能性も

神出:「主人のいびきがうるさい!」なんて話は日常会話にもよく聞く話で、ともすると笑い話にも聞こえますが―

Dr.Yellow直樹先生:いびきをかいて寝る方の約7割は睡眠時無呼吸症候群の可能性があると言われているほど、決して軽んじてはならない重要なシグナルのひとつです。睡眠時無呼吸症候群とはその名のとおり、眠っている間にたびたび呼吸が停止してしまう恐ろしい病気です。とはいえ、ご自身だけではなかなかそのことに気づきにくいというのが実情です。睡眠時無呼吸症候群が関係する病気は、私たちが想像している以上に裾野が広がっています。突然の心不全や高血圧などは一般の方にもイメージしやすいものと思いますが、認知症や脳卒中、脳梗塞やがん、夜間頻尿などといったものまですべて睡眠時無呼吸症候群と実は深く関係していることはあまり知られていません。日常的に酸欠状態が続けば当然のことながら脳細胞が破壊され、認知症の急激な進行を招いたり、脳卒中のリスクは約4倍に、がんによる死亡率は4.8倍にも上昇するという研究データが報告されているほどです。

神出:そうなんですね!怖いのはてっきり呼吸停止による突然死だけかと思っていましたが…

Dr.Yellow直樹先生:今挙げたものはほんの一例にしか過ぎません。最悪のケースはもちろん死亡することです。しかし、それはご本人だけでなく、交通事故など他人を巻き添えにして死に至らしめてしまう可能性もあるほど、この睡眠時無呼吸症候群という病気が持つ本当の恐ろしさは底知れぬものがあります。

顔の小さな“美人”と言われる方も要注意?!
睡眠時無呼吸症候群になりやすい要素は肥満だけではありません

Dr.Yellow直樹先生:例えば今は特に新型コロナウイルスの感染防止のため、当院にお越しになられる患者さんのほとんどはマスク姿でいらっしゃいます。その姿からも顎が小さく、すっぽりとマスクに顔が隠れてしまうような方には念のためマスクを外していただいて診察したりもしています。たとえ耳の違和感でご来院いただいていたとしても、いびきに関するお悩みはないかお聞きすると、みなさん一様に驚いた表情で「なんでわかったのですか?」と言われます。顎の骨格の小ささも睡眠時無呼吸症候群には深く関係していることがわかっています。顔が小さく、ほうれい線がないような一般的に“美人”と称されるような人は実は危険な要素を持ちあわせている可能性があります。耳鳴りやめまいに苦しまれている患者さんの中にも、無呼吸症候群を実は併発していらっしゃる方が実際の診療現場にも多く見受けられます。逆に無呼吸症候群のせいで耳鳴りやめまいが生じているケースもあります。特に「眠りが浅い」「低酸素状態が長く続いている」という状態は身体のあちこちに深刻なダメージを与えています。

  • 寝ているときに自分のいびきの音で目が覚める
  • 息苦しさを感じてたびたび目が覚める
  • 夜間尿が多い
  • 朝起きると頭痛がひどい
  • 昼間に眠たくて仕方がない
  • 集中力が続かない

などといった症状がある方は注意が必要です。

神出:睡眠時無呼吸症候群になりやすいタイプとしてはどちらかというと肥満など、ある種わかりやすい要因を持っている方が多いイメージですがいかがですか?

Dr.Yellow直樹先生:いいえ、そんなことはありません。ごく平均的な体形の方もいれば小さなお子さんまで実にさまざまな患者さんがいらっしゃいます。昔から「寝る子は育つ」という言葉があるとおり、眠りの浅いお子さんの成長はやはり伸び悩みますし、おねしょに悩まされているという親御さんも少なくありません。低酸素状態では筋肉も十分に休まりませんし、肩こりなどさまざまな部位に不具合を生じさせます。もっと酸素を取り入れようと自然と口呼吸にもなりますし、それによってさらに体内に菌が取り込まれやすい環境にもなります。喘息や気管支の病気にもなりやすく、虫歯リスクも高まります。確かに肥満の方は気道が狭くなりがちですので、患者数としては多い傾向があります。しかし、「私は痩せているから関係ない」ということは断じてありません。睡眠時の低酸素状態により脂肪燃焼が十分にできず、徐々に太ってしまうことで結果として気道がふさがりやすくなってしまうなど双方向からの問題が隠れています。太っている・痩せているといった外見的なものでこの病気を見分ける理由にはなりません。

 高い手術成功率にこだわり続けた長き研究の日々が今を支えている

神出:先生はいつ頃から呼吸器のプロフェッショナルとして、睡眠時無呼吸症候群の治療に携わってこられたのでしょうか?

Dr.Yellow直樹先生:20年ほど前に大阪で西日本で初めてとなる「睡眠時無呼吸センター」のある病院に勤務をしていた時期がありました。主に呼吸器内科や精神科などから保存的治療を要する患者さんやCPAP(治療用の専用人工呼吸器)が続けられない事情がある方、非常に難度の高い治療や再手術を必要とされるような患者さんが全国各地からお集まりになられました。

神出:重い症状で苦しむ患者さんには救いの場所だったに違いありませんね。

Dr.Yellow直樹先生:しかし、無呼吸症候群の手術は一般的に専門医師が教科書どおりの手法で行っても全世界でも成功率は50~60%程度と言われています。さまざまな論文を読んでもやはりその程度の数値しかありません。しかし、この病気は直接的に生命の存続に関わるような重大な病気です。私は何としてでもその低い数値を自分の手で変えたいと強く思うようになりました。家にあった小さな木製の折り畳み椅子を喉の外枠に見立てて、幅広のゴムを粘膜として、すぐに問題点に気づき、改良法を思いつきました。それだけでなく術後の口から鼻への逆流といった問題を防止できる舌根肥大の方にも舌根に手術操作を加えずに改善できる方法を考え出しました。ついには手術成功率を92%にまで引き上げることに成功しました。

過去の事例をご紹介するならば、無呼吸低酸素指標(AHI/40以上で重症)が100を超える患者さんにおいて2(5以下で正常値)にまで改善させたこともあります。治療を行うからにはそこまでの覚悟と信念を持って患者さんと向きあうように努めています。

神出:それは今までの常識では考えられないほどの驚異的な数値ですね!

Dr.Yellow直樹先生:しかしひとつ、みなさんには決して忘れていただきたくないことがあります。本来、手術というものは最終手段として考えるべきものであるということです。手術はすべてを解決できる魔法ではありません。一瞬でも間違った選択をすれば逆に悪化させる可能性だって大いにあるものなのです。例えば飲み物を飲む際、鼻から外にあふれ出してしまうようなリスクや術後の回復によっては気道がさらに狭くなってしまい、治療に欠かせないCPAPが効かなくなってしまう可能性だって考えられます。睡眠時無呼吸症候群の手術は特に鼻や喉の奥の非常にデリケートな部分において出血を伴います。医師側としてもことさらに神経を擦り減らして行うような手術となります。10日程度の入院が必要となりますし、その間はもちろん不自由な生活を強いることにもなります。

神出:私たちも手術を簡単なものだと勘違いしてはなりませんね。

Dr.Yellow直樹先生:20年近く睡眠時無呼吸症候群に悩むさまざまな患者さんを診てきた私だからこそ、これだけは患者さんにしっかりと伝えておきたいと思います。

その方にあった最善の治療法を
根気強く模索し続けるという姿勢を常に忘れない―

Dr.Yellow直樹先生:最初、うちのクリニックの名前の長さに驚きませんでしたか?クリニック名に並べられている病名そのままに、当院はその治療を特に得意としており、確かな治療実績を持っています。無呼吸症候群についても苦しまれている患者さんは開業当初から後を絶ちませんし、その時、その症状、その方に応じた最適な治療法をさまざまな角度からご提案することを意識しています。手術まで至らなくても改善を図る方法は考えられますから、ぜひお一人で悩まず当院までご相談いただければと思います。

睡眠時無呼吸症候群は突然死だけでなく、居眠り運転など他人の生命をも奪う可能性がある非常に危険な病気であることを忘れないで―

神出:睡眠時無呼吸症候群は本当に誰にでも起こりえる病気なんですね。

Dr.Yellow直樹先生:繰り返しになりますが、睡眠時無呼吸症候群は自分の生命だけでなく、居眠り運転など人の生命をも奪う可能性のある、非常に危険な病気であるということを忘れないでください。治療においても軽く考えないで、真剣に取り組んでいただきたいと切に願います。

神出:あらためてこの病気の底知れぬ恐ろしさを感じます。

Dr.Yellow直樹先生:早期発見の重要性に加えて、気づかれないまま放置されていることが多い病気であることももっとたくさんの方に知っていただきたいと思います。心臓手術を受けた患者さんのうち、その多くの方がなんらかの睡眠時無呼吸症候群の症状を持っていたという研究データもあります。一日でも早くご自分の異変に気づくことができれば、運命は必ず変えられるはずです。

放置し続ければ8年後の生存率は60%台(つまり40%ほどの方は死亡されていた)という衝撃の報告も―
いびきでお悩みの方やご心配な方はぜひ一度ご相談ください

神出:いびきは笑いごとでは済まされないものだと気づかされました。

Dr.Yellow直樹先生:いびきは狭い部分を無理にでもなんとか通っているときに発症している音です。特に問題はいびきにもならない無呼吸です。続けて2~3分息が止まっている方もいらっしゃいます。周囲の方はいびきが止まってよかったと思うのではなく無呼吸になっていないのかと心配してあげてください。親子で顔立ち骨格が似るように軌道の狭さも見るのです。睡眠眠中の出来事ですので、ご本人だけではなかなか気づけないことも多いと思います。ご家族など身近な方からの指摘にも、ぜひ一度耳を傾けてみてください。誰しも疲れなどで散発的にいびきをかくことはあります。しかしそのいびきが本当に一時的なものであるかどうかは、しっかりとした検査や診察を受けてみなければわからないことでもあります。ご心配な方はぜひ一度、当院までお越しいただければと思います。

最近よく見掛けるのが、質的に問題ありのCPAP治療です。特に耳鼻咽喉科以外でのCPAPに多いのが、呼吸器の入り口が鼻であることを無視したような取り組みです。副鼻腔炎などで細菌感染した化膿性鼻漏があるのに、CPAPで風圧をかけてしまうと、喉、気管支炎、肺に細菌を送りこむのを促してしまいます。そのような場合は、鼻の細菌を特定し、薬剤性耐性を調べ、抗生剤投与、鼻、副鼻腔処置、お家で鼻うがいなどを行い、鼻の状態を改善させてからCPAPを使うようにするべきです。
テレビでの睡眠時無呼吸の特集で、のどの軟口蓋という部分について正常、異常と写真を見せてましたが、
私がみたら正常と言われてた人も異常の疑いありと頭にすぐスイッチが入りました。
私はTV局に正常と言われてる方は検査をしてちゃんと確かめましたか?と質問しました。するとちゃんとした返答がありませんでした。
以前、その取り上げられていた医療機関で睡眠時無呼吸の手術を受けられた患者さんが当院にいらっしゃり、のどをみる機会があり、そのレベルは把握してました。
テレビの情報に騙されて飛びついて、下手な手術を受けて取り返しがつかないことにならないようにして下さい。
マスコミ関係の皆さんもよく取材対象を丁寧に勉強して下さい。
第一人者は何人もいないのです。視聴率狙いの誇張はやめるようにして下さい。医療は患者さんの命、社会の皆さんの命に関わることなのです。

 

インタビュワー:神出優子(編集ライター)

出版社勤務を経て、雑誌やWEBをはじめとするさまざまな媒体で執筆活動や企画編集を行うフリーライター。近年は特に医療分野で活躍する人物を中心に年間100本以上のインタビュー記事を執筆している。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME