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難聴や睡眠時無呼吸症候群がひとつの引き金に
― 忍び寄る認知症の危険信号

[2020.08.18]

耳鼻咽喉科領域を中心に、さまざまな症例・分野において豊富な知識と経験をお持ちのDr.Yellow Clinic直樹先生。特に難聴や睡眠時無呼吸症候群の治療においては日本でもトップクラスの精度を誇っており、はるか遠方からも救いを求めて日々多くの患者さんがお越しになられています。そんな数々の治療現場から垣間見た“リアル”をテーマに、今回Dr.Yellow Clinic直樹先生にお聞きするのは「認知症との関係性」について。意外にも思える組み合わせながら、そこには驚きの真実が隠されていました

 

無自覚のうちに身体に対して深刻なダメージを与えていく
睡眠時無呼吸症候群の底知れぬ恐ろしさとは―

神出:前回も睡眠時無呼吸症候群についてお話をお伺いさせていただきました。「顔が小さい」「顎が小さい」「ほうれい線がない」などといった特徴を持つ、いわゆる“美人顔”の方は要注意という大変興味深いお話をお伺いしました。

Dr.Yellow直樹先生:そうですね。新型コロナウイルス感染症の影響により、マスクをされて来院される患者さんは非常に多くなりました。それゆえ、マスクにすっぽりと顔が覆い被さって、骨格などもわかりにくくなっていますが、「この方はちょっと睡眠時無呼吸症候群が心配だな」と気になった方については、ついこちらからお声がけしてしまうことがあります。

当院にお越しになられた理由がたとえ別の症状だったとしても、もし睡眠時無呼吸症候群を患っているならば慢性的に身体に対して低酸素状態が続いているということになります。いずれ生命に直接的なダメージを引き起こしかねない危険な状態にあるということです。

神出:過去にも多数、睡眠時無呼吸症候群に悩む患者さんを診て来られた先生が心配されるほどの顔立ちということならば、その可能性は高いはずですね。ご本人も突然指摘されて驚かれるのではないでしょうか?

Dr.Yellow直樹先生:開口一番、「なんでわかるのですか?」と皆さん一様に驚かれます。しかし、あらためてじっくりお話をお伺いするほどに、当てはまる項目が増えていくことで次第にご本人も状況を理解されます。

患者さんの中には内科で高血圧と診断されて長期にわたって薬を飲み続けられている方もいらっしゃいます。しかしその高血圧となってしまった原因がそもそも先に睡眠時無呼吸症候群にあった可能性も大いに考えられますよね。

繰り返しになりますが、睡眠時無呼吸症候群という病気の最大の恐ろしさはご本人が無自覚であることに他なりません。実際に心臓手術が必要と診断された重度の患者さんに対する研究においても、手術前に睡眠時無呼吸症候群を発見でている方はわずか全体の0.4%にしか過ぎなかったという残念な研究データが過去に報告されたこともあります。

日々現場でこの病気と戦っている私にとっては、この限りなく低い数値は大問題であると危機感を強く感じています。薬を飲んで血圧を下げることはあくまでも一時的なことです。

もっと早期に根底にある原因を追究し、正しく治療できることこそが私たち医師が果たすべき使命だと痛感しています。

認知症や鬱病まで引き起こしかねない睡眠時の闇―

神出:睡眠時無呼吸症候群が関係する病気のその多様さにも、前回のお話では大変驚かされました。

Dr.Yellow直樹先生:一般的な人で睡眠時間は6時間以上あると思います。それが毎日必ずあるのです。

その中で頻繁に低酸素状態が繰り返し起きているのならば、心臓に大きな負担がかかっている状態であることはもちろん、隠れ脳梗塞や難聴、耳鳴り、めまい、血流障害などさまざまな部位に徐々に後戻りできない深刻な影を落としてゆきます。

放置し続ければ、いずれ認知症や鬱病にもつながりかねない深刻な事態となるでしょう。

神出:認知症や鬱病もですか?それはもはや自分だけの問題ではなく、家族や社会までをも巻き込んでしまうような深刻な事態となってしまいますね。

Dr.Yellow直樹先生:その通りです。それを防ぐためにも一刻も早く、一人でも多くの方にこの病気を見つけ出してあげたいと切に願います。ドライな医者からみれば、私はとてもおせっかいな医者かもしれませんけどね(笑)それでも私は一人でも多くの患者さんを救いたいと願っています。

神出:それほどまで親身に患者さんのことを考えて診てくださる直樹先生のような方がいてくださることは大変ありがたいです。

Dr.Yellow直樹先生:何度も言いますが、睡眠時無呼吸症候群は無自覚のうちに人の生命を簡単に奪ってしまう大変危険な病気です。ともすれば社会問題にも深く根を広げてしまうような病気でもあります。まして車の運転中に起きたならば、多数の他人の命を奪ってしまう想像を絶する甚大な被害となるでしょう。家系的な傾向も高いといわれる病気です。深く考え突き詰めるほどに、やはり私はどうしてもこの病気を見逃すことはできないとあらためて思うのです。

どんな病気も放置するほど進行するものですが、睡眠時無呼吸症候群にいたっては8年後の生存率は60%台まで落ち込む、つまり4割近くの方か亡くなられているという研究データもあります。

一日も早く、一人でも多くの患者さんを早期に見つけ出したいと切に願います。

さまざまな実際の検査データをもとに
あらゆる可能性と事実を包み隠さずお伝えする意義

Dr.Yellow直樹先生:初めにことわっておきますが当院は認知症を専門では診る病院ではありません。しかしながら、日々難聴や睡眠時無呼吸症候群の患者さんの治療にあたる中で、認知症の予防までを含めた疑い方やアプローチを考えることの重要さを身に染みて感じています。

当院で認知症の診断を行うことはありませんが、さまざまな実際の検査データを提示して、考えられるすべての可能性について包み隠さずお話することはとても重要なことだと感じています。広く言えば「認知症の予防」という点において社会貢献できる一端を、当院も陰ながら担うことができれば幸いと考えています。

神出:それほどまでに先生が患者さんと真剣に向きあわれているということですね。

Dr.Yellow直樹先生:表面的な問題だけを診るのではなく、その奥深い根本を探ろうとする執念をいつも私は意識しています。目の前にいらっしゃる患者さんが今まさに運命の分岐点に立とうとされているかもしれませんし、悪い方向に向かわんと踏み出す一歩を阻止するチャンスが今かもしれない―いつもそう考えながら患者さんとは向きあうようにしています。

神出:本当に直樹先生と出会えた患者さんは幸運だと思います。

勝手な思い込みがご自身の健康を損ねている可能性も―
異常を感じたら早期に受診し、正しい治療をお受けください

Dr.Yellow直樹先生:逆に患者さん側にこの場を借りてお願いしたことがあります。例えば、耳鳴りなど異常を感じ始めて2か月も3か月も経ってから病院にお越しになられる方がいます。

どんな異常も早期発見・早期治療が鉄則です。その方のその後の健康状態にも大いに関わる問題につながってゆきます。

神出:素人判断で“様子を見る”という行為は危険なことですね。

Dr.Yellow直樹先生:そうですね。こと難聴に関してはご自身で「聞こえている」と感じているレベルと実際の聴力とでは大きく乖離していることはよくあるものです。耳の病気は特に時間の経過とともに悪化の一途を辿りやすいため早期の治療開始が必須となります。

また、処方された薬を指示通り飲まれない方、勝手な判断で服用を中止されてしまわれる方もいらっしゃいます。どうかそれだけはやめていただきたいと切にお願いします。

勝手なご自身の思い込みで、むしろ自らの健康を損ねている可能性があることもどうか気に留めていただきたいと思います。

単なるひとつの病気として捉えない
つながりのある診断をこれからも目指して―

Dr.Yellow直樹先生:少なくとも私は医師として覚悟を持って一人一人の患者さんに対して診断を下しているつもりです。それゆえ、ときに患者さんには厳しいことを言わざるを得ない場面もあります。

それはその病気が「いつか治ればいい」ものではないからです。「今直さなければならない」病気だからです。特に急性の難聴は時間との勝負です。患者さんのこれからの人生そのものを左右することにもつながります。さらには先に述べた通り、難聴の症状などと付随して認知症にも進行するスピードが速まってしまう危険もあります。

私は単なる難聴と簡単に捉えたくはありません。私の大切な患者さんを本気で救いたいからこそ、これからも真剣勝負できる医師でありたいと思います。

 

インタビュワー:神出優子(編集ライター)

出版社勤務を経て、雑誌やWEBをはじめとするさまざまな媒体で執筆活動や企画編集を行うフリーライター。近年は特に医療分野で活躍する人物を中心に年間100本以上のインタビュー記事を執筆している。

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